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HEC Parisで1学期を終えて思う、海外MBAの現実(Term 1の感想)

こんにちは。

今回はHEC ParisのMBA(経営学修士)について、Term 1を終えた今の心境を夫に聞いてみました。この記事は、夫に書いてもらったものを私が加筆修正しています。

海外MBAを考えられている方、すでに準備を進めておられる受験生、今後入学されるMBA生みなさんのお役に立てますと幸いです。今回はMBA生本人である夫の視点でお読みください。

目次

はじめに

2021年1月から始まったHEC Paris MBA。

受験期間はおよそ2年間(詳しくはこちらの記事をご参照ください)、新型コロナウイルスの影響で入学時期が4ヶ月延びて始まったMBA生活だ。受験期間中は多くのビジネススクールの在校生や、アラムナイの説明会に足を運んではMBAへの思いを強めていた。

華のMBA生活を想像し、期待度MAXで挑んだ1学期。しかし思い描いていたものとは少し違い、当校のインタビュー時にアラムナイから言われた「バラ色の生活ではないよ」という言葉が蘇る。MBA生のツイートや体験談は、その裏に辛い経験を積み重ねた上で、良い体験を受験生のみなさんに発信されていることが多いように思う。

これはHEC Parisだけでなく、他のビジネススクールも同じだろう。少し批判的な部分もあるかもしれないが、僕が思い描いた理想のMBAと、その現実のギャップをまとめておきたい。

海外MBA、僕が感じた5つのギャップ

第1章 授業に刺激が足りない!

念願の欧州トップスクールに合格。GREスコア底辺で入学した僕は優秀な教授陣や同級生に囲まれて、さぞ自分の未熟さを思い知ることになるだろうと、良い意味で期待していた。イメージはハーバードビジネススクールのこのクラス。

他校と比較するのは良くないが、このレベルでインテンスな授業は正直、今学期にはなかった。だが、ほぼ教授の一方通行であった1つの授業を除いて、他の教授陣は学生のインタラクティブな姿勢を最後まで求めていた点は非常に良かった。

今学期の授業では、クラスでの発言が評価の対象になることが一切なかったため、より活発なディスカッションを学生に求めるのであれば、そういった評価制度が必要なのではないか。この点は、来学期以降の授業に期待したい!

コロナ前のMBAを経験していないので何とも言えないが、クラスディスカッションにおいてはオンライン授業の弊害は大きかっただろう。HEC Parisに関しては、今学期のほとんどが対面授業とオンライン授業を混ぜたハイブリッド型授業で進められた。

オンライン授業では、教授陣が献身的にインタラクティブな場を作ろうと、発言を要求したり、ZoomのBreakout roomsを使って学生間で意見を出し合うよう配慮されていた様子が伺えた。ただし学期が進むにつれて、周りの学生同様に、自分自身もオンライン授業への緊張感は薄れていった。

心地良くピリついた学習環境というのは、まだまだZoomには出せないと感じたし、内気な自分にとっては対面授業の方が発言しやすい。おそらく、周りの雰囲気や表情を伺いながら発言できるからだろう。卒業するまでの間に、完全に対面授業になる見込みはあまりないのではないか。だからこそ、起床して1分で参加できてしまうオンライン授業の誘惑に負けず、それと同時進行する対面授業に積極的に参加したいと考えている。

授業の内容自体については、想像通り「浅く広く、マネジメントトラックを進む者が必ず持っておくべき教養」という内容だった。学校側としても、この16ヶ月で学生を何かのスペシャリストに育てようとしているわけではないので、会計知識ゼロや金融知識ゼロの学生たちを知識のスタートラインに立たせてくれる内容だったと思う。

第2章 とにかく時間がない!

社会人経験4年でMBAに来た僕が言うことではない気がするが、MBA期間中は一旦キャリアから離れることで、自分の人生をゆっくり考え直すことができるだろうと思っていた。

現在この記事を書いている休暇中は、余計なことをダラダラと考えられるが、学期中はまったくその余裕がなかったのが正直なところ。それでもHEC ParisのMBAはプログラムが16ヶ月間なので、他の欧州ビジネススクールに比べるとスケジュールには余裕がある方だ。

今学期の僕がどのような過ごし方をしていたのか、ある1週間のスケジュールはこんな感じだった。

予習・復習は夕食後や週末にすることが多かった。ここでの「なんらかの説明会」というのは、今後のカリキュラムの案内やキャリア関係がメインだ。

僕は社費生のため、喫緊の課題ではないキャリア関連のイベント(CV・インタビュー講座など)でかなりの時間を取られることには少しもどかしさがある。しかし、転職後の卒業生の給与がMBAランキングに大きく関与することを考えると、学校側も力を入れたいところだろう。

メインの学業について今学期は、グループワーク(40%)・個人課題(30%)・復習(20%)・予習(10%)といった時間配分だったように思う。もちろん各学生のバックグラウンドや、チームメンバーの優秀さによってこれは変動する。他の日本人同級生から聞いたのは、ある同級生グループは当初から役割分担をきちんと考え、各メンバーの負担やグループワークに費やす時間を最小限に留めるよう努力したそうだ。

僕のグループは正反対で、自分以外のメンバーはギリギリで追い込むタイプばかりだったので、課題の提出はいつも締め切りの2-3分前ということが毎回続き、何度肝を冷やしたことか!

同級生へのギャップとして後述するが、周りは個性的で素晴らしい学生ばかりだが、それぞれに欠点もある。それらを補い合い、グループワークでベストパフォーマンスを出すためにも、グループ結成当初からお互いの特性を理解し合い、話し合う場を持つことが大切だと学んだ。この反省は、来学期以降に必ずつなげていきたい。

第3章 試験、こんなもんか!

上記の通り、ギチギチのスケジュールで、十分に準備ができないまま期末試験期間に突入した。思い返せばニュージーランドの大学時代は、単位を取得して卒業するのが本当に大変だった。大学1年目の1学期で単位を落とし、親に学費面で迷惑をかけたので、期末試験そのものにトラウマがある。

HEC Paris入学前には日本人の先輩方との親睦会があったので、単位取得の難しさを事前に確認したところ「普通に勉強していれば大丈夫だよ」とアドバイスをもらっていた。それでも不安は拭い切れなかった。実際に統計学の中間試験では、平均50点という地獄をみんなが経験しているので、試験に対するストレスを抱えた同級生も多かったと思う。

僕も、もちろんその1人。期末試験へのプレッシャーについて、アメリカ出身の同級生と話していると「こんなに高い学費を払ってるんだから、俺らは学生ではなくむしろ客だ」と彼は言った。このアメリカ的な考え方にはしびれた。

たしかに学校側としても、卒業後の学生たちが転職し給与ベースを跳ね上げて学校のランキングに貢献してくれることを望んでいるはずだ。よっぽどのことがない限り、簡単に落とそうとはしないか…。

それからは、気持ちがかなり楽になった(昔からの癖で、試験直前には緊張のせいでえずいていたが)。実際の試験の難易度は、今学期に関しては大したことはなかった。

先日、金融の試験について教授からこのようなメールが送られてきた。

なんと、154人中16位。会計の授業では、3つに分かれたセクション(52人中)で1番だった。

周りの学生たちは、合格さえすれば結果なんてどうでも良いと考える人がほとんどの印象だった。しかし僕にとっては、勉強に時間を費やした分、結果に反映されたことが素直に嬉しい。同時に、入学時のGMATやGREのスコアにコンプレックスを感じていた僕にとっては「苦労はするが、ちゃんと頑張ればMBAでも周りの優秀な学生たちと戦えるんだ」という自信にもつながった。これは、MBAの良いギャップだったかもしれない。

今学期はさまざまな不安から、勉強に時間を費やしすぎて、機会費用(Opportunity cost)が高くついたなと思っている。パリ市内に住んでいながら、観光が碌にできていないのだ!

この休暇中はそれを取り戻すように、パリ生活を満喫している。来学期、不安になった自分に言えることは「普通に勉強していれば大丈夫だよ」ということだ。

第4章 第3言語(フランス語)が伸びない!

HEC Parisでは英語の他に、もう1つ外国語を習得することを卒業要件としているため、僕はフランス語の授業を取っている。

語学の授業は週に2回、僕の場合は月曜日と水曜日の18時から、それぞれ1時間半ずつだった。ベーシックなクラスを3ヶ月弱受けただけで決めるべきではないが、授業のみでフランス語が伸びる気はしないというのが本音。

卒業要件のレベルに到達できるかも心配だが、パリ市内に住む者としては少しでも生活を充実させるためにも、もっとフランス語が上達したいという焦りがある。フランスで出会う人の中には、英語でそつなく会話ができる人もいるが、英語を話すことに抵抗を持つ人が大半な気がする。

彼らを尊重するために、僕自身できる限り英語を使いたくないと思っているが、フランス語が驚くほど伸びない。その理由は明確で、フランス語を勉強するための時間を確保できていないのだ。授業は18時からで、いつもヘトヘトに疲れた状態で始まる。

第3言語については成長を感じられない3ヶ月間だったが、自習も含めてこれから勉強を進めていきたい。目標は「レストランでフランス語で格好よくオーダーをし、冗談で一笑いが起きるくらいのレベル」になること(笑)

現時点で、Boulangerieに入って注文に困ったときは「Deux croissants, deux pains au chocolat et une baguette de tradition, s’il vous plaît. (クロワッサン2つ、パンオショコラ2つ、バゲット1本をお願いします)」しか言わない。

しかし最近は、他のものも果敢に挑戦している。先日食べたtarte aux fraises(イチゴのタルト)は、あまりに美味しくてオンラインセミナーどころではなかった。食べ物が美味しくない国での生活はなかなか辛いので、その点は本当にフランスに感謝している。

第3言語の上達については、このブログでまたご紹介したいと考えている。

第5章 同級生は決して超人ではない!

これが1番大きなギャップだったかもしれない。

入学前はおよそ50ヶ国から入学する同級生たちを、仕事・勉強ができて、人間性の優れた人ばかりだと本気で思っていた。もちろんそういった学生は数多くいるが、必ずしもそうではなく、僕の性格を否定してきた人もいた。

海外MBAの説明会に参加した際に、在校生や卒業生から伺った「MBAは周りとの競争ではなく、コラボラティブな環境」という言葉にいつも心躍らせていたのでショックが大きかった。でも今思うのは、自分自身が完璧な人間ではないのに、HEC Parisの一員であるということ。

それは周りの学生も同じで、優秀だけれどもどこか完璧ではないのだ。そもそも完璧であればMBAなんて必要ない。そう考えると心が軽くなったし「こいつはこういう欠点があるけど、ここはずば抜けてるよな」という見方ができるようになった。

たとえば、マーケティングのプレゼンテーション準備の際にこんなことがあった。締め切り間際で、パワーポイントのデザインを変えるよう指示されたときに「俺を頼れ」と言って、対面授業に2回しか顔を出さなかったクラス1の怠け者が、徹夜でアニメーションまで仕上げてくれた。統計学のプレゼンテーション準備の際には、データ集計に週末をすべて費やそうとしていると「俺を頼れ」と言って、複雑なエクセル関数を用いてわずか1時間で仕上げてくれた奴もいた。

入学して3ヶ月が経ったにも関わらず、実は同級生の半分ほどは顔と名前がまだ一致していない。キャンパスから離れたパリ市内に住んでいること、オンライン授業が多いこと。そしてクラスが3つのセクションに分かれていて、そのセクションがさらに2つのグループに分かれていることが主な理由だ。

新しく出会う同級生たちとプログラムを進めていく中で、僕のことを良く思わない人がこれからも現れるかもしれない。しかしそれはごく自然なことだ。日本にいてもそんなことは日常茶飯事なのだから。

大切なのは、自分に興味を持ってくれる人に、どれだけ貢献できるかということだと思う。今は休暇中でキャンパスからは離れた生活をしているが、JOMO(Joy of missing out – 取り残されることの喜び)を感じながら、妻と共にパリを満喫したい。

パリの代名詞-エッフェル塔

おわりに

今回は「海外MBAの理想と現実」というテーマで、5つのギャップについて記事にまとめました。

少し批判的な表現が含まれていることで、もしかしたら不快に感じられた方もいらっしゃるかもしれません。しかし私たちがMBA受験時に読んできた体験談の中で、あまり語られてこなかった部分に触れてみたいと思いました。

夏以降に入学を控えていらっしゃる方々、勉強に励まれる多くの受験生の方々、これからMBAを考えておられる方々、そしてMBAそのものをご存知ない方にも知っていただけたらと思い、この記事を書くことにしました。あくまでも夫の体験談であり、他の日本人MBA生にはもっといろんな思いがあるはずです。

夫は入学前に、海外MBAについて周囲から否定的なことを言われたり、それで心に不安が影を落とすこともあったようですが、今HEC Parisに入学したことに一切の後悔はないとのこと。

みなさんにとってのMBA生活が、人生で最高の時間、最高の経験となりますことを心より願っています。最後までお読みくださり、ありがとうございました。

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