HEC Paris MBA 2学期を終えて(Term2の感想)

こんにちは。

HEC ParisでのMBAについて、Term2を終えた感想を夫にまとめてもらいました。この記事を通して、MBA受験生をはじめ、多くの方にHEC Parisのことや海外MBAについて知っていただければ嬉しく思います。

ここから先は、MBA生本人である夫の視点でお読みください。

目次

はじめに

HEC Parisでの学校生活が早くも半分を過ぎた。

1学期の感想についてはこちらでお話ししたように、思い描くMBA生活とはギャップがあったのが正直なところだった。しかし4月中旬から6月末までの怒涛の2学期を終えた今、前学期とは全く異なる心境でバカンスを迎えている。

僕がMBA生活で大切にしていることの1つは、グローバルな場でビビリな自分をどれだけ変えられるかということだ。幸いなことに前学期に比べて、2学期のプログラムは半ば強制的に自分を成長させてくれるものだったと感じている。

成長を実感した裏側では、悔しい思いや恥ずかしい思いをたくさん味わった。この約2ヶ月間のことを、前学期との比較も交えながら振り返りたい。

HEC Parisでの2学期は、弱い自分と真剣に向き合えた期間だった

第1章 求めていたのはこれだと言わんばかりの授業

今学期の授業形態は、フランス国内でのコロナ感染者数の減少やワクチン接種率の増加から、ほとんどのクラスが対面授業(+Zoomによるオンライン授業の同時並行)で実施された。複雑な思いで教鞭をとっていた教授もいたかもしれないが、ほぼ不自由なく勉強に励む環境を整えてくれた学校に心から感謝したい。

以前の記事では前学期について「授業に刺激が足りない」ことを言及しているが、今学期は自分にとって刺激がありすぎたぐらいで、学校に対する過去の発言を今すぐに撤回したい。おそらく、1学期は新たな生活環境に慣れることや、インターンシップのアプライ等で忙しいだろうという学校の配慮から、多忙になりすぎないプログラム設計だったのではないかと今となっては思う。

2学期の主な科目は以下の7つ。

  1. Corporate Finance ※
  2. Ethics & Sustainability ※
  3. Macro-economics for Business
  4. Management Accounting and Control ※
  5. Operations Management ※
  6. Organizational Behaviour ※
  7. Strategic Management ※

※印は、クラス内での発言や参加(Participation)が正式に成績に反映された教科だった。Participationの程度に差はあれど、前学期と比較して圧倒的にその点を重視された学期だった。

以前の記事でも触れたように、授業内で積極的に発言することで自分自身を鍛えたいのは、それが内向的な僕の苦手分野であることと、今後の国際社会においては発言力が必ず必要とされるものだと考えているからだ。

国際的な場では、発言しない者=意見の無い者=弱者という考え方を感じることが少なくない。その視点では今の自分は明らかに弱者。10個のことが頭の中をよぎったとしても、その中の1つを発信できるかできないかの性格だ。

グローバルミーティングや海外企業との交渉など、発言の場は様々あれど、おそらく今の状態では相手に見くびられるだろう。そんな焦燥感を僕は入学前から抱いていた。だからこそ、失敗が許される海外MBAの授業内での発言の機会は、自分にとって絶好の環境だと信じていた。

と、格好よく書いているが、実際はほとんど上手くいかなかったし恥ずかしい思いもたくさん味わった。たとえば、Ethics & Sustainabilityの授業では、イギリスの投資会社で日本株をカバーしていた経験がある同級生が、日本の上場企業のステークホルダーに対する取り組みを紹介していたが、その件に関して僕はちんぷんかんぷんだった。そして、その内容に興味を持った教授が僕を指名し、日本人として何か補足を求めた。内心プチパニック状態だった僕は焦って頭が回らず、臨機応変に意見を述べることができないままその場が流れた。

穴があったら入りたかった。しかし、このまま落ち込んでいても何も変わらないのだ。そもそも発言するためには知識がなければ元も子もない。僕は授業が終わったあとでその同級生に話しかけ、彼の発言内容の意味を改めて教えてもらった。恥ずかしさから逃げずに向き合えた自分をここは素直に褒めたいと思う。

大学時代の学部では金融・経済を専攻し、金融業界出身の自分にとって、今学期の授業はどれも非常に新鮮なものだった。Corporate FinanceやMacro-economicsは良い復習になっただけではなく、ケースを基にした実用的なものであったことから、基礎をより理解するのに役立った。

Strategic Managementでは多くのビジネスフレームワークを学ぶことができた。正直なところ、分析ツールに対して最初は懐疑的だったのだが、いざ使ってみると企業の置かれた位置や問題点がより明確に見えてくることに驚いた。

教科としては毎週のケースを通して、さまざまな企業とその業界を知ることができ非常に勉強になった反面、膨大な知識量や創造力が必要とされるコンサル業界は、自分には決して生業にできないなとも感じた。

第2章 質が高く、フレンドリーな教授陣

パリ市内からキャンパスに通うには、Pont de Sèvres駅から乗車できるシャトルバスが便利

HEC Parisの教授陣は60%以上がフランス以外の国籍である。世界各国から優秀な教授が集まり、我々に講義を提供してくれている。そのため今学期も気さくでユーモアのある教授に恵まれ、学びそのものを楽しむことができた。

特に、Corporate Financeの教授は素晴らしい方で、ファイナンスの経験がない同級生からも「内容は難しかったが最も楽しい授業だった」との声を耳にした。金融業界出身の僕としてはCorporate Financeが専門分野ということもあり、この授業を受けられたことで当校MBA全体の教授の質をザックリと推し量る良い物差しになった気がする。

周りの同級生が感じていたように、僕もこの教授は本当に素晴らしかったと思う。なかでも感銘を受けたのは、自分の授業スタイルが確立していることだ。Corporate Finance 101においてMBA生に教えるべき内容を明確にし、短期間の中で効率良く質の高いレクチャーを提供することを、自身の授業を毎年繰り返すことで磨かれてきたのだなというのが、講義やコースマテリアルを通して伝わってきた。

彼の授業では、実際の企業をベースにしたケースを事前に読み、グループ課題/個人課題を提出、そのケースと課題を基に講義を受けた。この教授の特筆すべき点は、自身で作成したケースで授業を進めていたこと。他の教科ではHBSのケースに触れることが多かったため、当校で作成されたケースを読めることは珍しく、質の高いビジネススクールに来た実感が湧いて素直に嬉しかった。

そもそも金融のケースというのはあまり存在しないのかもしれないが、(学部でも金融を専攻してきて思うのは)実用的な例があると授業の楽しさは倍増するものだ。社会人経験があり、実用的な授業が大好物のMBA生にとっては、この教授が提供する授業とMBA生の需要がしっかりマッチしていた。だからこそ教授自身も、自らケースを作り続けているのだろうと推測する。

フレンドリーな教授陣の人柄にも少し触れておきたい。僕は通学に、パリ市内発〜キャンパス着のシャトルバス利用している。実はこのシャトルバスは乗客が少なく、ある教授と僕の2人だけといったシーンが度々あった。当初はその教授に気を使い、車内でも素知らぬふりをして離れて座っていたが、ある日バスが渋滞に巻き込まれ15分以上遅刻してきたのだ。

バス停に2人きりで気まずくなり「あのー、教授ですよね。バス来ないですね…。Uberで一緒に行きましょうか」と声をかけた。その一件を機に打ち解けることができ、コースの内容や裏側、それからプライベートな話までたくさん共有してもらうことができた。顔と名前がしっかり認識されている分、悪い成績を取るわけにはいかないと感じ、その教科の予習等により多くの時間を割くことになったが…(笑)

また、シャトルバスは授業開始の30分ほど前に到着するため、授業のセットアップのために早く到着した別の教授とクロワッサンとコーヒーで朝食を共にすることもあった。この教授も気さくな方で、学生たちからの信頼も厚い。僕はよく日本での投資銀行の経験を話したりした。フランス初心者の僕に対して、教授は現在のコロナのアップデートやパリ郊外のことについてもたくさん教えてくれた。

このように、教授陣の人間性にも触れることのできた素晴らしい2か月間だったと感じている。

第3章 Business = Busyness 忙しさは2学期>>>1学期

HEC Parisのキャンパス内。コロナ対策で席の間が空けられている

「2学期の忙しさは、1学期の比じゃない」こんなことを以前耳にしていた。1学期の時点で忙しさはすでにしっかり感じていたため、これ以上どう忙しくなるのよと思っていた。が、一言で表すとクレイジーだった。2ヶ月間まるで休むことなく、ひたすら走っているような感覚だったのだ。なぜここまで忙しくなったのか。振り返ってみると、プログラムの設計に要因があるようだった。

第一に、2学期は2ヶ月間のみと短すぎる中で、科目数の増加からスケジュールがパンパンだった。各科目の課題もそれぞれに重い。また全科目においてグループ課題があったため、グループでの各プレゼンの準備に割ける時間が限られていた。個人では、予習としてケースを読む量やエッセイを書く量が圧倒的に増え、両方とも得意ではなかった自分にとってはこれまた人一倍時間がかかってしまったのだ。

余談だが、非ネイティブが故に課題をこなすことに時間がかかる、といった悩みは日本人の学生だけの問題ではないようだ。たとえば、メキシコ出身の同級生はいつも、エッセイを書くときにはまず母国語のスペイン語でドラフトし、グーグル翻訳のあとに修正を加えると言っていた。

母国語で書く方が表現力があるし、何より手っ取り早いのだと話してくれた。この話を聞いて僕も、コア授業ではないエッセイ課題でずっと後回しにしていたものに同じやり方で取り組んでみた。すると、半日もかからずあっさり終わってしまったのだ。

もしも一から英語でやっていれば、2日はくだらない課題だったと思う。英語力の向上を放棄しているようにも思えるが、最終的には自分で修正しているので、英語の表現力は母国語を通して多少は身につくとも考えられるのかもしれない。これも1つの選択肢として、今後も頭の片隅に置いておこうと思った。

本題に戻り、この多忙な2学期を乗り越えるカギは、グループのメンバーとの連携にあった。僕は2学期が始まる前に、各教科のことを事前に把握しておこうと思い、シラバスに一通り目を通すことにした。そこには課題の数や内容、提出日等が記されており、課題の多さにまず驚かされた。

今学期に提出しなければならない課題の数が、合計でなんと20以上もあったのだ。頭の中だけではとても管理しきれないと思い、それらの提出日を2学期が始まる前に全てリスト化しておいたのは正解だった。各提出日が近づくと、グループのメンバーにも積極的にリマインドしていた。これにはメンバーからも感謝され、ささやかながら助けになれたと思っている。もし、これを読まれたMBA生がグループ内での自分のポジションに悩まれているなら一案としておすすめしたい。

第4章 どんなに忙しくても、ケースは必ず読んで授業に臨んだ

キャンパスに向かうシャトルバス、Savacの車窓から見えるセーヌ川

MBAプログラムにおいて、勉強時間で最も個人差があるのはおそらくケースを読むことだろう。HEC Parisの授業ではHBSのケースが用いられることが多く、1ケースあたり10〜20ページという量がほとんどだった。

ケースの内容をしっかり理解しようとすると、今の自分では1時間半から2時間ぐらいはかかってしまう。それがエッセイやプレゼンなど、提出するべき課題の内容に直結している場合はさらに時間を要した。

とはいえ今学期は読解力の向上を1つの目標にしていたし、そもそもケースを把握していなければ授業についていけないことがほとんどである。教授からのコールドコールを恐れないためにも、どれだけスケジュールが押していても、僕はケースを理解するまで丁寧に読むことについては一切妥協しなかった。

自分自身の読解スピードの遅さが、さまざまな課題を並行して取り組む際の足枷になることは入学当初から自覚していたので、ケースを読むための環境作りは整えておいてよかったと思っている。iPadのアプリ内にケースを事前に取り込み、通学時にメモを取りながら予習するようにしていた。

当たり前かもしれないが、自分が知識を持っている分野のケースはすらすらと読めることもよく分かった。たとえば金融業界を経験したことのない人が、投資銀行が舞台のケースを読み、説明もなしに専門用語が飛び交うとその内容を理解することは難しいだろう。そのためソーシャルメディアや自動車関連等、一般消費者にも馴染みのあるケースは総じて読みやすく感じた。

ふと、MBA受験時にGMAT対策で通っていた某予備校の先生の「GMATのVerbalはMBA生活で必ず役に立つ」という言葉を思い出した。これはその通りだ。GMATの読解がある程度出来ていなければ、MBAに来てもずっと苦しむはず。苦労した受験勉強にも意味がある。僕は今、まさにそれを身をもって実感していることを受験生の皆さんにお伝えしたい。

正直なところ、ケースを読むのは面倒くさい。でもそれは自分自身が読むことに苦手意識があるからだと思う。そのため今学期は、この点に関して決して手を抜かなかった。おかげで読解力は前学期よりも向上し、読むスピードも少しは早くなった。ボキャブラリーも増えてきたと感じている。

2学期を通してケースを読むための心理的な抵抗を取り払えたことは、今後のキャリアにおいても価値のあるものだと思っている。

第5章 才気あふれるグループメンバーたち

HEC Parisキャンパス内にあるMBAラウンジ

最後に、2学期のグループについても触れておきたい。

当校のMBAプログラムは5〜6人でグループが構成されるのが一般的だが、僕のグループは事情により4人だけで進めていくことになった。グループで取り組む課題が山のようにある中、1人1人の負担は自然と大きくなった。

幸いだったのは、各メンバーにそれぞれ違う強みがあり、バランスの取れたグループだったこと。他のメンバー3人が何らかの形で日本に関わりがあったという点にも助けられた。日本人としての僕の性格をよく理解してくれていたので、そういう意味で動きやすさを感じることができたからだ。

一方、仲良しこよしのグループだったかと言われるとそうでもない。相手を尊重できるメンバーたちではあったが、それと同時に「MBA生らしい積極性」も各々が持ち合わせていた。

2学期が始まる前にメンバーの顔ぶれを知ったときから、自分のグループの性格はある程度想定していたので、その中で自分がどのように意見を主張できるのかをイメージしてグループ課題に臨んだ。何にでも賛同するお人よしになることだけは絶対に避けたかったからだ。

最初の数週間は本当に大変だった。おそらくその頃は、グループのメンバーから「何でも言いなりになる簡単な奴」と本能的に見なされていたように思う。だからこそ気を抜けなかった。メンバーからの評価を変えたい一心で、僕は積極的にグループ課題に取り組んだ。

変化の兆しを感じたのは2学期の半ば、あまりにも課題が多すぎて全員が少しずつ手を抜き始めたころだった。僕はマクロ経済のプレゼンで、リサーチとスライドの作成に他のメンバーよりも時間をかけて取り組んだのだ。

それに加え、毎週のようにあったコーポレートファイナンスのグループ課題も、1人のメンバーと協力してすべて終わらせた。形のある実績を残すと、周りは評価しやすいのだということがよく分かる経験だった。僕が中心となって進めた課題の成績が良かったことから、グループ内で均衡の取れたポジションを確保することができたと思っている。

総括すると、自分を成長させてくれた素晴らしいメンバーに恵まれたことに心から感謝したい。同じグループになったメンバーたちの説得力、表現力、プレゼンテーション能力、創造力などは、僕が常に羨み、欲しいと思っていたものだった。それらすべてを持ち合わせたメンバーと同じ時間を過ごせたことは、このMBA生活において忘れられない経験となった。

おわりに

HEC Parisでの2学期は、自分にとって格好良いシーンがたくさんあったわけではありません。むしろ苦い経験の方が圧倒的に多かったように思います。しかし、そういうところから人は成長していけるのだということを、学生の立場に戻って改めて学ぶことができました。

3学期以降は、今まで触れてこなかった分野を中心に勉強する予定です。前半で磨いたソフトスキルを活かして、新たなハードスキルを身に付けていきたいと思います。

最後までお読みくださり、ありがとうございました。

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