MENU

音楽心理学が学べる本・おすすめ5選(心理学科の卒論で使った文献を振り返る)

こんにちは。

先日、TwitterでBGMの心理学について何気なくつぶやくと、興味を持ってくださった方がいらっしゃいました。「音楽心理学ってちょっと面白そう」と思われた方が他にもいらっしゃるかもしれないと考え、この記事を書いてみることにしました。

私は音高で音楽の教育を3年間受けたあと、音大に行くことなく、心理学科がある大学に進学しました。所属していたのは摂食障害を主に研究されている教授のゼミだったのですが、私は卒業論文のテーマを「背景音楽の心理学的効果」にしました。音楽から離れた大学生活の中で、もう一度音楽について考えてみたいと思ったからです。

日本は心理学の研究がとても遅れており、論文を書くにはアメリカの先攻研究に頼る必要があります。この記事では、私が卒業論文を書いたときに参考にした文献の中から、日本語で書かれた本のみを取り上げたいと思います。

はじめに、私が音楽心理学に興味を持ったきっかけをお話しさせてください。

目次

BGMの効果っておもしろい! 私が音楽心理学に興味を持ったきっかけ

私がBGMの面白さを発見したきっかけは、高校時代の授業で取り組むことになった課題でした。

音高では普通教科に加えて「主科(専攻楽器のレッスン)・副科(副専攻楽器のレッスン)・ソルフェージュ・音楽理論・音楽史・演奏法(アンサンブル)・合唱」など音楽の授業がたくさんあります。

高校3年の冬、音楽理論の授業内の課題で、3年間の集大成としてチームごとに作曲に挑戦することになりました。発表会はアレンジ部門とオリジナル部門の2つに分けられ、テーマはそれぞれ自由に決めることができます。私のチームは6人で、ピアノ科は私だけでした。あとは声楽の子が2人、フルート、クラリネット、サックスの子が1人ずついて、みんな個性的なメンバーです。

1人1人の個性を生かしながら他のチームとはかぶらない題材を、と考えたときにふと思いついたのが、短い朗読劇にBGMを付けることでした。私はショートショート(短編小説の中でもさらに短いもの)がたくさん載った本をみんなに見せ、どれか1つを朗読用にアレンジして朗読劇をやってみないかと提案しました。BGMはピアノで、バッハの「G線上のアリア」とショパンの「別れの曲」をシンプルにアレンジしたものを使うことになりました。

そして「背景音楽が朗読に及ぼす効果を体験してもらう」ことをテーマにアレンジ部門に参加し、発表会は無事に終わりました。その後アンケートによって集められた感想には、

BGMのピアノが朗読を引き立てて、感動が増した。

音が鳴りだす瞬間、はっとした。

BGMがあることで物語の場面が想像しやすく、聞きやすかった。

目を閉じると、その場面が浮かんでくるようだった。

といった反応が多くよせられました。私にとって、これはとても印象的なできごとでした。

大学の卒業論文の導入として、私は自らが経験したこのエピソードを使うことにしました。BGMを用いることで物語全体の流れを明確に示すことができ、無音の状態で朗読を聞く以上の感情を聴取者に生じさせたというのは、とても面白いことだと思ったからです。

このように、音楽がどのように人の心を動かし、私たちの意識や行動に影響を与えているのかを扱うのが音楽心理学です。前置きが長くなってしまいましたが、ここからおすすめの本をご紹介します!

音楽心理学について学べるおすすめの本。初心者向け〜専門書まで5冊

1. 心を動かす音の心理学―行動を支配する音楽の力 (齋藤寛 著)


心を動かす音の心理学ー行動を支配する音楽の力

  • 1章 なぜ、人間には音楽が必要なのか?
  • 2章 音楽は夢を実現させる助けとなる
  • 3章 音楽でストレスを消す
  • 4章 音楽は思考力を高める
  • 5章 音楽で変わる行動心理学
  • 6章 聴覚の感性を研ぎ澄ます

心理学の専門書というよりは、入門として軽く楽しめる内容です。全6章のうちの1つに、BGMについて書かれた章があります。お店で流すBGMの種類が、店内の滞在時間・売り上げに影響を与え、お店そのもののイメージにも深く関わってくることが分かるのが面白いです。

人間にとって音楽とはどのような存在なのか、そして生活の中に音楽を効果的に取り入れる方法がとても易しく書かれています。

2. 音のデザイン―感性に訴える音をつくる (岩宮眞一郎 著)

音のデザイン―感性に訴える音をつくる

  • 1章 音が魅力のモノづくり
  • 2章 サイン音のデザインーメッセージを伝える音の最適化
  • 3章 映像に命を与える音のチカラー映像に組み合わせる音のデザイン
  • 4章 サウンドスケープ・デザインー風景の音づくり
  • 5章 公共空間における快適な音環境の創造ー公共空間の音環境デザイン
  • 6章 音のユニバーサル・デザインーバリアフリーな音環境の創造
  • 7章 音の文化的側面ー音のデザインの基礎として
  • 8章 音楽のデザイン
  • 9章 サウンド・デザイナーに必要な音の感性を育てる教育プログラム

音楽というよりも「音」に関する研究が中心の内容です。著者の岩宮眞一郎氏は現在、日本大学芸術学部の教授で九州大学の名誉教授でもあり、これまでにたくさんの本を出版されています。参考文献が充実しているのもありがたいです。

3. 音楽と映像のマルチモーダル・コミュニケーション 改訂版 (岩宮眞一郎 著)


音楽と映像のマルチモーダル・コミュニケーション

  • 1章 序論:映像作品における音楽の役割
  • 2章 オーディオ・ヴィジュアル・メディアを通しての音楽聴取行動における視覚と聴覚の相互作用
  • 3章 液晶プロジェクタによる大画面映像が音と映像の相互作用に及ぼす影響
  • 4章 映像に組み合わせた音楽の各要素が映像作品の印象に与える影響
  • 5章 スタッカート、レガート表現が視聴覚刺激の印象に及ぼす影響
  • 6章 色彩が音楽の印象に及ぼす影響
  • 7章 音楽のリズムと映像の動きの同期が音楽と映像の調和に及ぼす効果
  • 8章 音楽と映像のアクセントの同期が映像作品の印象に及ぼす影響
  • 9章 音と映像の同期要因および速度対応要因が調和感に及ぼす影響
  • 10章 映像の速度と密度、音楽の調とテンポが調和感に及ぼす影響―意味的調和の検討
  • 11章 テロップと効果音の印象の類似が調和感に及ぼす影響―意味的調和の効果
  • 12章 映像の変化パターンと音の変化パターンの調和
  • 13章 音高の上昇、下降と各種の変化パターンの調和をもたらす要因
  • 14章 総括:視聴覚コミュニケーションの諸様相

音楽と映像の相互作用について学べる1冊です。Amazonや書店のオンラインストア、読書メーターなどの書評サイトすべてに現時点でレビューが見つからなかったことに驚きました。個人的には、2冊目にご紹介した同著者の「音のデザイン」よりこちらの方が興味深い内容でした。

私たちが普段から目にする映像作品は、必ずといっていいほど、何かしらの「音」を伴います。そういった映像作品で使われる効果音や、音楽が持つ力に焦点をあてた専門書になります。

4. 音楽と感情の心理学 (P.N.ジュスリン、J.A.スロボダ 編;大串健吾、星野悦子、山田真司 監訳)


音楽と感情の心理学

原著は「Music and Emotion: Theory and Research」で、私がご紹介するのは翻訳版の方です。

  • 1章 音楽と感情
  • 2章 音楽と感情についての心理学的展望
  • 3章 脳に耳を傾けて―音楽的感情についての生物学的展望
  • 4章 音楽と感情―音楽療法からの展望
  • 5章 音楽的構造の感情表現に及ぼす影響
  • 6章 映画における感情の源泉としての音楽
  • 7章 演奏とネガティヴな情動―演奏不安という問題
  • 8章 音楽演奏における感情伝達の概観とその理論構成
  • 9章 音楽の情動的効果―産出ルール
  • 10章 自己報告による音楽への感情反応の連続的測定
  • 11章 日常の音楽聴取における感情
  • 12章 強烈な音楽体験による情動

日本語で読めるものの中ではこの本が最も心に響いた、私にとって思い入れのある1冊です。タウンページぐらいの厚みで値段もお高めですが、心理学に興味のある方だけでなく、楽器を演奏される多くの方にとって収穫のある内容だと思います。

私たちは音楽を聴くと、その曲が持つさまざまな性格(明るい、楽しい、悲しい、暗いなど)を知覚しています。楽器演奏や作曲、音楽鑑賞などにおいて、そこから感情的な関わりを取り除くことはとても難しいです。音楽と感情の結びつきについて、各方面でどのような研究がされてきたのかを学ぶことができます。

5. 音楽心理学入門 (星野悦子 編著)


音楽心理学入門

  • 1章 音楽心理学とは何か―歴史、研究領域、研究法
  • 2章 音楽と音響―音を知覚する生理的な仕組み
  • 3章 楽音の知覚―音の大きさ、高さ、印象判断など
  • 4章 音楽の認知―メロディやリズムの認知、調性の認知など
  • 5章 音楽の記憶―音楽の短期記憶、長期記憶、潜在記憶
  • 6章 音楽と他の認知能力―モーツァルト音楽への心理的反応、長期の音楽教育と一般認知能力
  • 7章 音楽と感情―音楽と感情の関係について
  • 8章 音楽行動の発達―乳児期・幼児期・児童期・青年期の音楽行動
  • 9章 音楽と脳―演奏と脳活動、音楽と感情の脳活動など
  • 10章 演奏の心理―演奏の実証的研究、演奏を生みだす心と身体
  • 11章 音楽の社会心理学―社会の中での音楽の役割、音楽の好みと社会との関係など
  • 12章 音楽療法―音楽療法の実際、音楽心理学と音楽療法の関係
  • 13章 産業音楽心理学―商品としての音楽、産業のための音楽など

こちらは私が大学を卒業したあとに出版されたものですが、4冊目にご紹介した「音楽と感情の心理学」の監訳者の1人・星野悦子氏が中心となって書かれています。星野氏は現在、上野学園大学音楽文化学部の教授で、音楽心理学と認知心理学を専門に研究されています。

タイトルには入門とありますが内容としては専門的で、音楽心理学そのものについて幅広く学ぶことができる1冊です。また、章の終わりごとに登場するコラムも興味深いものばかりで、楽器を演奏される多くの方や、ピアノの先生にもおすすめです。

おわりに

世界には文字を持たない文化や、絵画のような視覚的な芸術を持たない文化が存在するそうですが、音楽を持たない文化は存在しないと言われています。音楽って不思議ですよね。

心理学の分野において音楽が扱われるのは、社会心理学や認知心理学の中の一面であることが多く「音楽心理学」としての研究はまだまだ進んでいないのが現状です。今回、ブログを通しておすすめの本をご紹介するにあたって、かつて参考にした文献のうちの数冊がすでに絶版になっていました。

私が大学を卒業してかれこれ8年ほど経ちますが、その間に音楽心理学に関する新しい本がほとんど出版されていなかったことにも驚きました。これからの研究に期待したいです!

音楽がお好きな方や現在音楽を勉強されている方、ピアノの先生方にとって、音楽理論の視点とは少し違った「音楽の面白さ」を感じていただけましたら幸いです。

お読みくださり、ありがとうございました。

この記事が気に入ったら
フォローしてね!

目次
閉じる